恋宿~イケメン支配人に恋して~
「あちらの奥が浴室です。露天風呂は当館自慢の絶景ですので、ぜひどうぞ」
「露天風呂……」
「えぇ、気持ち良いですよ。疲労やストレスなどの効能もございます」
可愛げなく無愛想に話を聞く私にも、彼はにこにこと笑顔を向ける。
優しそうな人だなぁ。仕事だから愛想がいいのは当たり前なんだけど、普段からも人が良さそうなのは伝わってくるというか……。
……いや待て、私。慎だって人が良さそうに見えて浮気するような男だったんだから。この人だって普段の顔は分からない。
そう。見た目だけで判断しちゃいけないんだから。
「いらっしゃいませ」
自身に言い聞かせながら廊下を歩いていると、通りがかった仲居さんたちも笑顔で小さく頭を下げる。
なんだか、あたたかい旅館だなぁ。仲居さんもみんなにこやかで、アットホームというか、和やかな空気というか。
「吉村様、どうかなさいましたか?」
「あ……いや、なんだかアットホームな旅館だな、と」
「本当ですか?嬉しいです、ありがとうございます」
……見た目だけで判断しちゃいけない、そう思う。
けどこんな空気のいい旅館に出来るのは、支配人のこの人がいい人だからなのかな、って。館内の独特の匂いを嗅ぎながら、そう思った。