恋宿~イケメン支配人に恋して~
しばらく歩いてきた先で見つけた看板に、私はまた足を止める。
そこに書いてあるのは『遊技場』の文字。
「遊技場……?」
「あぁ、昔のゲーセンって言えば分かりやすいか。射的とか輪投げとか、縁日であるようなゲームだよ。行くか?」
「行きたいです」
ふたり店内へと入れば、そこには確かにお祭りの出店のような大きなひな壇に景品がずらりと並んでいる。
「いらっしゃい!あれ、どっかで見た顔だな……あっ!千冬じゃねーか!」
「どうも」
店主らしい40代くらいのヒゲ面のおじさんは、千冬さんの顔を見ると豪快に笑って彼の背中をバシバシと叩く。
「知り合い、ですか?」
「学生の頃よく通ってたからな」
「あぁ、千冬はよく高校生の頃学校帰りにここで遊んでてなー……って、見ない顔だな。彼女か?」
「うちの短期バイトですよ」
嫁か彼女かとからかわれることにも慣れてきたのか、千冬さんは相手にする様子もなく答える。
そんな彼の横で、高校生の頃……先日見た写真に写る幼い彼の顔を思い出すと、こういうところに寄り道している姿も簡単に想像がついた。