恋宿~イケメン支配人に恋して~




……どうも、調子がくるう。

ふてぶてしいと思ったら笑顔を見せたり、突然距離が近づいたり、強いと思ったら涙を見せたり。

掴みづらくて、変なやつ。だけどどうも放って置けなくて、その表情に時折愛しさを感じる自分も、いる。



小さくなる後ろ姿を見つめていると、スーツのジャケットの胸ポケットにある携帯がヴー、と鳴り出した。



「電話……?」



取り出した仕事用のスマートフォン、その画面には『着信・田中さん』の文字。

田中さん……先日足を骨折した、仲居頭だ。どうかしたのだろうか。



「はい、芦屋です」

『あ、田中です~お疲れ様~!』



通話ボタンを押して電話に出ると、受話器から聞こえてくるのは聞き慣れた明るい声。



「お疲れ様です。ケガの具合はどうですか?」

『それが予想より大分治りが良くて!来月頭から戻れそうです~!』

「来月……」

『今臨時でバイト使ってるって聞きましたよ!その子のためにも1日でも早く戻りますね!』



それだけ伝えて『じゃあまた!』と切れた電話に、俺はホーム画面に戻った携帯を見つめた。

そこに表示されたのは『6月24日』の文字。



< 172 / 340 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop