恋宿~イケメン支配人に恋して~
6月の終わりまで、あと6日。
……そうか。そう、だよな。
7月になればあいつはここを出て行く。自分の居るべき場所に、帰る。
そう、だって結局永遠なんてないから。どんなに求めても、掴んでも、終わる時は終わる。
『……ごめんね、ちぃちゃん』
あの日の、彼女と同じように。
分かっている。……なのに、触れたいと思ってしまうんだ。愛しさは込み上げて、止まらなくなる。
触れてしまった時は、どうしたらいいだろうか。
その時俺は、きっと。
「……きっと、逃げるしか出来ないだろうな」
諦めたように小さく呟いた一言。
短くなった煙草を床に落とし革靴で踏めば、微かな匂いが空に滲んだ。