恋宿~イケメン支配人に恋して~
「もう時間ですか?」
「あぁ。だからお前を呼びに来た」
すると、靴を脱ぎ部屋に上がり込む彼は、首元の水色のネクタイをするりとほどく。
「千冬さん?」
「……少し、大人しくしておけよ」
「へ?」
なに……?
あやしげな瞳でこちらを見ると、その手はほどいたネクタイで私の目を隠すように縛った。
「え!?ちょっと、なにするんですかっ……」
「いいから。黙ってろ」
ちょ、ちょっといきなり目隠ししたりしてなにを……!?
ま、まさか、『やっぱ1ヶ月働いたくらいじゃ300万には程遠いからな。体使って稼いでこいよ』とか言って、売り飛ばされる!?
思い浮かぶ嫌な想像に、背中にたらりと伝う汗。そんなこちらのことなど気にもせず、千冬さんはなにを考えているのか、私を肩に担ぎあげる。
「ぎゃっ!?次はなんですか!?」
「いいから。あ、お前その目隠し取るなよ。……取ったらケツ撫で回すぞ」
「いやー!!変態ー!!」
本当にやりかねない彼の声色に、私は仕方なく大人しく従うように担がれたままどこかへ運ばれていく。
こ、これは……私本当に売り飛ばされるんじゃ……!?
どうしよう、でも前も見えないし、逃げ出したところで千冬さん足速そうだからすぐ捕まりそうだし……。
あれこれと考えている間に、千冬さんは目的地に着いたらしく足を止めた。