恋宿~イケメン支配人に恋して~




大きな拍手から始まった飲み会は、あっという間に盛り上がりだす。

男女問わず飲む人が多いらしく、沢山用意してあった瓶ビールも日本酒もどんどん空になっていき、皆どんどんと上機嫌になっていく。



「理子ちゃん、飲んでる?」

「はい、あんまり強くないんでお茶とビール交互で」



わいわいとにぎわう中、ビール瓶片手にやってきた大渕さんは顔を真っ赤にさせ皆のグラスにビールを注ぐ。



「大渕さんもあんまり強くなさそうですね」

「そうそう、俺すぐ顔に出ちゃうんだよね~」

「ちなみに八木ちゃんは全く顔に出ないほうでね、ほら見て。今も普通の顔してるけど、日本酒1本あけてるのよ」

「え!?」



隣でそう教えてくれた箕輪さんの言葉に驚き、少し離れた席でお酒を飲む八木さんをみるものの、その笑顔はいつもと変わらずにこにことした品のある笑顔。



強いし顔にも出ないんだ……見かけによらないなぁ。

……まぁ、そういう箕輪さんも見ている限りだいぶ飲んでいるのにあまり酔っ払っていないから強いみたいだけど。



「けどやっぱ、飲み会名物の酔っ払いといえばあの人よねぇ」

「うんうん、あの人の酔い方はすごいからねぇ」

「へ?」



あの人?

ニヤニヤと笑うふたりから、そんなにも酒癖の悪い人がいるのだろうかと考えてしまう。

まさか仲居の誰かがキレやすくなるとか、掃除のおばさんが泣き上戸とか?それとも板前のお兄さんが赤ちゃん言葉になっちゃうとか……?



「……おい理子」

「へ?わっ」



うーん、と考えていると、突然ぐいっと肩を組むように回される腕。

驚き見ればそれは千冬さんで、大分気を抜いているのかスーツのジャケットは脱ぎ捨てて、白いワイシャツのボタンもふたつも開けて……といつものかっちりとしたスーツ姿とは真逆だ。


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