恋宿~イケメン支配人に恋して~
「千冬さん。どうしたんですか」
「お前1ヶ月よく頑張ったなぁー、よしよし。いい子だ、頑張ったなー」
「……なんかキャラが違うんですけど」
肩を抱き頭を撫でる、そんな彼に箕輪さんたちはおかしそうに笑う。
「出た、新藤屋名物の酔っ払い」
「って、あれって千冬さんのことだったんですか?」
「そうそう。千冬くん、酔うと上機嫌になるタイプでね。いっつもこうやって皆を褒めちぎるのよ」
千冬さんが、酔うと上機嫌に……。
あまりに意外な姿に戸惑う私と、見慣れたように笑う箕輪さんたち。それらを気にする様子もなく、千冬さんはひたすら私の頭を撫でる。
いや、酔っ払っているとはいえ……さすがに恥ずかしいんですけど。
体はぴったりくっついているし、頭を撫でる手は優しいし……!
「上機嫌な千冬さんなんて見慣れないからびっくりしちゃうよねぇ」
「はい、すごく」
「でも酔ってる時って本性が出るっていうじゃない?ってことは、いつも厳しい顔してる千冬くんも、本当はこうして皆を褒めてあげたい気持ちでいっぱいなのよ」
「……」
いつもは、厳しい顔で叱ることばかりの千冬さん。
だけど、その言葉が本当の気持ちなら。
『よく頑張ったな』
心の中では、そう褒めてくれているのなら。それは、すごく嬉しい。
「最初はなんてクズでカスな女だと思ったけどなー、おまけに愛想も色気もないしな!残念!」
「……これも本心ってことですかね」
「え……あ、えーと……」
余計な本音までついてきたけど……。
ムッとする私の顔にも気付かず、千冬さんはまだ私の髪をぐしゃぐしゃと撫でている。