恋宿~イケメン支配人に恋して~
「よっこいしょ……っと」
時刻は深夜2時。大盛り上がりの広間から一転、私の姿は静まり帰った別館の廊下にあった。
隣には、酔いつぶれふらふらな千冬さんを抱えながら。
あの後も大いに盛り上がった飲み会は、当然潰れる人もおり、ほとんどが近くの客室に一泊をしたり、そのままその場に寝たりして自然にお開きとなった。
私もそろそろ部屋に戻ろうかとしていたところ、この酔っ払いに捕まり……。
『部屋まで行くならついでに俺も連れていけ!』
……とのことで。人に頼むのに偉そうな態度なのが気に障るけれど、仕方なく彼の仮眠室のある別館4階までのぼってきたわけだ。
「千冬さん、部屋ここでいいんですか?」
「……おー……」
すぐ近くにあった部屋の前で足を止めると、私に支えられながら立つ彼は財布から取り出したカードキーをかざしロックを開け、ヨタヨタと部屋へ入る。
「……失礼します」
このままひとりにするのも心配だし、せめて布団くらい敷いてあげよう。
そう続いて部屋に入ると、そこは私の使っている部屋よりは広いものの、形や間取りはあまり変わりない和室があった。
壁際に寄せられたテーブルの上や、壁際に置かれた本棚には沢山の本や書類などが置かれ、あとは最低限の電化製品やスーツなど……贅沢はしていない、質素な生活が見えた。
仮眠室ってことはちゃんと自宅があるんだろうけど……帰宅してる様子はないし、ほとんどここにいるってことだよね。
けどこの部屋から見るに、仕事をするか寝るだけかの部屋なのだろう。職場でプライベートを匂わせないところがまた、千冬さんらしいとも思う。