恋宿~イケメン支配人に恋して~
『出来ることからひとつひとつやってみろ』
『落ち着いてしっかり考えて、後悔しない方を選べよ』
『可愛げなくても、素直にな』
思い出す、彼がくれた沢山の言葉。
いつだって真っ直ぐに向き合ってくれていたのに、最後になったら逃げるんだ。
彼も、私も。怖いから、傷つきたくないから。
「……私、行きます」
「理子ちゃん……?」
ザバ、と浴槽からあがれば、肌は熱く湯船の熱を帯びたまま。
「そろそろ行かないと、東京行き乗り遅れるから」
ひとり残した八木さんに「お世話になりました」と小さく挨拶をすると、その場を後にした。