恋宿~イケメン支配人に恋して~
「す……すみません、つまずいて壊しちゃって」
「キャー!300万の花瓶が粉々にー!!」
「た、大変!どうしましょ!!」
壊れた花瓶と座り込む私を取り囲むように、キャーキャーと騒ぐ仲居さんたちの言葉に、一瞬固まり耳を疑う。
……さ、さんびゃくまん?
なにが?花瓶が?花瓶って……この花瓶が?
さんびゃくまん……
300万……
3000000……
「えっ……えぇぇ!!?300万!?これが!?嘘でしょ!?」
あまりの驚きに、悲鳴に近い声をあげながら問いかけると、芦屋さんは私の目の前にかがみ手を差し伸べる。
「お客様、大丈夫ですか?お怪我は?」
「えっ……な、ないです」
「そうですか、ならよかったです。一応詳しいお話をお聞かせ願いたいので、あちらのお部屋に来ていただいてもよろしいですか?」
「は、はい……」
これだけ皆が花瓶のことでわーわーと言っているのに、それより私の心配をしてくれるなんて……や、優しすぎる……。
驚きながらその大きな手をとり立ち上がると、彼に案内される部屋へと歩き出した。