恋宿~イケメン支配人に恋して~




リフレッシュ……なんて、全然。寧ろ働き詰めで疲れたし。おまけに早起きの癖までついて、今日も5時に起きちゃったし。

デスクで書類を広げると、休みの間にきていた仕事や連絡事項を確認する。



「吉村さん」

「へ?あ……おはようございます」



呼ばれた名前に振り向くと、背後ではツンとした顔の先輩が立っていた。



「これ、休みの間に来た仕事のリスト。チェックしたところが他の人が代わりにやってくれた仕事だから」

「分かりました」



手渡された書類を受け取り向き合えば、先輩はふんと呆れたように溜息をつく。



「いきなり1ヶ月も休んで行った旅行は楽しかったでしょうね」



出た。いきなり嫌味。

その言い方に一瞬ムッとするものの、一言をぐっと堪えた。



「……いきなり休み貰ってすみませんでした、ありがとうございました」

「本当よ。……けと、休み前は言いすぎたわ。辞めないでくれて安心してる」

「へ?」



先輩はそれだけを言うと、私の顔を見ることもなくその場をあとにする。

今の、言葉の意味って……?



『辞めないでくれて安心してる』



いつも怒るか嫌味ばかりの先輩。けれど、その一言には違う意味が含まれているのだろうことは分かる。



そうだ、考えてみればそもそも先輩に怒られるのは、いつも私が適当に仕事をしていたから。

先輩も、本当は言いたくなかったのかもしれない。だけどあまりに適当な私の仕事に言わずにはいられなくて、嫌味も言い方もきついけれど、本当は悪い人ではないのかもしれない。


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