恋宿~イケメン支配人に恋して~
そのままの足で電車に乗り込み、つい昨日走った道をまた戻って行く。
そして、着いた駅からバスに乗り換え……目的地に着く頃には時計の短針がお昼の12時頃を刺していた。
「……着いた、」
ヒールのまま、バスを降りれば目の前にあるのは『新藤屋』と書かれた旅館。その白い壁は、今日も日差しに照らされ光る。
心のなかには不安がよぎるものの、息をひとつ吸い込んで入り口へと向かう。
「いらっしゃいま……、!」
そこには丁度玄関前の掃除をしていたらしい、千冬さんの姿があった。
彼は竹ぼうきを手に私を見ると、驚き固まる。
「理子……?」
「……お疲れ様です」
お昼休みの時間で皆はいないのだろう。辺りにひと気はない。