恋宿~イケメン支配人に恋して~
「なっ、理子!?何してる!」
ガシャンッと音をたてながら、置物をひとつ、またひとつと壊して行く。それにはさすがに背中を向けていた千冬さんも大慌てで私の手を掴んだ。
「おいっ……やめろ!」
「……やっと、ちゃんとこっち見てくれた」
「え……?」
背けられるばかりだった瞳に、ようやくしっかりと映り込む私の顔。
「なんでいつも真っ直ぐに言うくせに、この前から目をそらすんですか……」
「……」
「『いらない』、『嫌い』って本気でそう思っているなら、ちゃんと目を見て言ってください!!」
隠さないで。ちゃんと言って。
私の気持ちと向き合ってほしい。
「仕事なら辞めました。私は、自分の意思でここに来たんです……自分で、あなたの傍にいることを望んだんです」
足元には、散らばる壊れた置物の欠片。
「分かってくれないならいいです、これ全部弁償するまで働いて返します。1ヶ月だって1年だって、何年かかってもここに居座って、私が本気だって教えてやりますから!!」
昔の恋人がなによ。不安が、恐れがなによ。
そんなもの気にしないでいい。だから純粋に、そのこころの答えを教えてほしい。
「千冬さんのことが、好きだからっ……!!」
私の『好き』に対しての、答えだけを。