恋宿~イケメン支配人に恋して~



「けどあの不器用な理子がそこまで言うのに、信じないわけがない」

「千冬さん……」

「俺は、お前を信じるよ。不器用だけど嘘はつかないもんな」



『信じる』その一言が、とても嬉しい。愛しさに、その体にぎゅっと抱きつき返した。

信じて。あなたをこんなにも想っていること。溢れるほどに、大きな大きな愛おしさ。



「……、」



そしてそっと顔を近付けると、ゆっくりとキスをする。

この前とは少し違う、触れるだけの優しいキス。

唇を離し目と目を合わせると、その眼差しが少しくすぐったくてお互い小さく笑った。



「……にしてもお前、派手にやったなぁ」

「へ?あ!!」



抱きしめられたまま視線を足元に落とせば、そこには割れたお皿や粉々になった置物……。

さっきは千冬さんの視線を向けたい気持ちでついやってしまったけれど、冷静になって考えるととんでもないことをしてしまったんじゃないだろうか。



「そこの皿が30万、壺が50万、置物は……いくらだったかな。確か100万以上した気がするが」

「え!?」

「それに加え床も傷ついてるし……これは一帯修正が必要だな。あー、いくらかかるかが楽しみだ」



とんでもないことをしてしまったんじゃないだろうか、じゃない。してしまったんだ……!

にや、と笑って淡々と述べられる数字を頭で足しながら、算出される総額にサーッと血の気が引いていく。


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