恋宿~イケメン支配人に恋して~
「じゃ、お疲れ」
「あっ!待ってください!!」
「ん?」
考えているうちにその場を去ろうとする千冬さんを、咄嗟に引き止める。
が、「なんだよ」と問い返す少し疲れたその顔を見ると、やはりそんなワガママは言えない。
「……べ、別に。なんでもないです」
「ふーん……んじゃ、おやすみ」
「……おやすみ、なさい」
言葉を飲み込み小さく頭を下げると、千冬さんはスタスタと足早にその場を後にした。
言いかけたことを気にとめることもなく、あっという間に去って行くって……なにこの温度差!!
確かに愛はあるのかもしれない。前より優しいしよく話すようにはなったし。だけど、千冬さんは本当に私のこと彼女だって思っている!?
別に仕事の話以外話すこともない!?一緒に過ごす必要もない!?
一緒にいたいとか、もっと触れたいとか、そう思っているのは私だけなんだろうか。
……私もさっさと寝よう。
感じた寂しさも、シャワーで流して眠ってしまおう。小さくため息をついて、また廊下を歩き出した。