恋宿~イケメン支配人に恋して~
「寝過ごした!!」
「うわっ」
突然の大きな声にはっと目を覚ますと、目の前には体を起こし、がっくりと肩を落とす千冬さんの姿。
見れば窓の外は朝陽が眩しく照らしていて、朝5時か6時頃であろうことを察する。
「くそ、3時には起きて書類片付ける予定だったのに……」
「珍しいですね、千冬さんが寝過ごすなんて」
「お前のせいだ、バカ」
「え!?」
私のせい!?
彼は責任を押し付けながら寝癖のついた髪をかくと、呆れたように溜息をひとつこぼす。
「……一緒にいると落ち着いて、このままでいたくなる」
「落ち着く……?」
「……そう」
少し照れているのだろう、顔を背ける不器用な後ろ姿。
落ち着く?このままでいたくなる?
私と、だから?
突然こぼされた本音に、つい口元は緩み笑顔になってしまう。
「じゃあ……また、たまにはこうして一緒にいてもいいですか」
小さな問いかけに千冬さんはこちらへ顔を向けると少し驚いて、ふっと笑みを見せる。
そしてゆっくりと顔を近づけると、触れるだけの優しいキスをした。
「もちろん」
心が、愛しさで溢れていく。
なんて眩しい、朝のはじまり。