恋宿~イケメン支配人に恋して~
「……それに、もう遅いしな」
「へ?」
「俺はとっくに、お前に本気だよ」
それは昨日の宗馬さんの言葉に対する言葉なのだろう。
『逃げ出すなら今だよ。千冬が本気になる前』
もう遅い。私に本気、そう言ってくれる。
あぁ、もう。そうやって優しくするからもっともっと好きになる。私だってそうだよ。千冬さんが好きで、離れたくない。あなたの側にいたい。
「……千冬さん、」
「まだ時間あるし、ちょっとゆっくりするか」
「ひゃっ」
そのままソファの上で私を押し倒すと、頬や首筋にキスをした。
くすぐったい、ドキドキする。さっきまで不安でいっぱいだった心が、彼への愛しさで溢れていく。
「……好きです、千冬さん」
「……あぁ、」
そしてその指先が、私の服に触れたその時。
「あー、よく寝たー!千冬早いねー」
ガチャッと開けられた寝室のドアから姿を現したのは、寝癖をぴょんとつけた宗馬さん。
彼は空気を読むことなく堂々とリビングへと入ってくると、台所へ向かい冷蔵庫を開ける。
そういえば、宗馬さんいたんだっけ……。
姿がないことから千冬さんは宗馬さんが帰ったと思っていたのだろう。ゆっくりと体を起こすと、ギッと彼を睨みつけた。