恋宿~イケメン支配人に恋して~
「……無理です、イヤ。お断りします」
「じゃ、300万払うんだな?一括で、今すぐ」
「うっ!」
けど、それを言われてしまうと何も言えなくなってしまう……!
「さ、どうする?今すぐ、この場で決めろ」
「っ~……」
じろ、と睨むように見る目。逃げることを許さないその視線に、せっかくのお風呂あがりだというのに嫌な汗が背中を伝う。
300万なんて払えない、だけど仲居なんて出来ない。
でも、どちらがいいかと聞かれれば……一ヶ月間の我慢で済むなら。
「……わ、分かりました……働きますよ!ここで!働けばいいんでしょ!」
「おう、思ったより物分りが良くて助かるな」
半ばヤケになって言う私に、芦屋さんは『だろうな』とでもいうようにふふんと笑う。
「そうと決まれば明日から仕事入って貰うからな。今日はそのままの部屋でいいが、明日以降は従業員用の宿泊室を使うように」
「えぇ!?部屋も変わるんですか!?」
「当然だ。あれはお客様のための客室であって、従業員はまた別。安心しろ、宿泊代は一泊分以外返してやる」
『お客様』という枠から外れれば、とことん容赦がないらしい。席を立つ彼に話の終わりをさとると、私も部屋を出るべく立ち上がった。