恋宿~イケメン支配人に恋して~
「っ……さっさと帰れ!このバカ宗馬!!」
「えー?なになに、いきなり冷たくない?あ、俺のことは気にせず続きどうぞ」
「気にするだろ!!」
千冬さんが怒鳴りつけても流す宗馬さん、そんなふたりの光景は仲が良いのだろうことを示している。
「あと、理子に余計なこと言うな。あれこれ考えて大事になるだろ」
「へー?あれこれ考えるほどの頭があるんだ?」
「またそういう言い方を……」
「だって生意気そうだし千冬はその子に夢中だしで気にくわないんだもーん」
拗ねたように口を尖らせる宗馬さんは、冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出すと、私たちの目の前にグラスを3つ並べた。
「ま、俺にあれだけきつく言われてもまだここに居座る図太さだけは認めてあげるよ」
そして、私の前のグラスに注いでくれた一杯のお茶。
『認めてあげる』、なんて……偉そうに。
「……別に、宗馬さんの許可なんていりませんけど」
「あ、もしかして喜んでる?」
「あぁ、喜んでるな」
「なっ!っ……全然!」
無愛想に言った言葉の中に含まれた私の感情を読み取るように、ふたりは笑う。
別に嬉しくなんてない。けどまぁ、反対されたり文句言われるよりはいいかなって。そう思っただけ。
好きな人を大切に思う存在に、嫌われたくはないから。
ギャーギャーと声が響く中、台所には空になったお皿が二つ重ねて置かれていた。