恋宿~イケメン支配人に恋して~





それから1日が経った、翌日の昼間。



「理子ちゃん、この器洗い場に戻してきてもらってもいい?昨日の宴会の時に使わなかったやつ一個回収し忘れちゃったみたいで」

「わかりました」



箕輪さんから手渡された青色の小さな器を持ち、私は言われたままに洗い場のある地下の厨房へと向かった。



これを置きに行ったらお昼ごはんとろう。

別館にある従業員用の食堂のメニューを思い出しながら、なににしようかと考えるうちにエレベーターは地下につき、静かな厨房の中を抜けていく。



「えーと、この器は確かここの棚……」



まだ完璧には覚えられておらず、ずらりと食器の並ぶ棚を見ながら置き場所を探す。



「あー!やらかしたー!!」

「わっ」



その時、厨房の奥から突然響いた大声。あまりにも大きなその声に驚き、つい洗い場から声の方向へと駆け寄った。



「どうかしたんですか」

「あぁ、まずい……やらかした……俺のバカ……!」

「島崎さーん?おーい」



その声の主は、なんとなく分かってはいたけれどやはり島崎さんだったらしい。何事かと声をかけてみるものの、彼は頭を抱え落ち込み私の問いに答えようともしない。



「醤油、注文し忘れたんだって」

「へ?あ、」



代わりに答えた声に振り向くと、そこにいたのは調理補佐の茶色い髪の猫背な男の子。



あ……この人確か、八木さんの彼氏。初めて話したかも。

以前八木さんが『ぼんやりしてる』と言っていた通り、後ろからのそっと現れた彼は、私が言えたことではないけれど愛想なくぼーっとした印象だ。


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