恋宿~イケメン支配人に恋して~



矢沢商店で、いつもの醤油を3本……よし、覚えた。仕込みでも使うかもしれないし、急いだほうがいいよね。

あ、一応八木さんたちに声かけて行ったほうがいいかも。そう思い着物姿のまま、靴だけを外履きに履き替えに別館のほうへと向かう途中で、休憩室に寄る。



「八木さん、ちょっとおつかい行ってきます」

「おつかい?どこに?」

「矢沢商店ってところまで、島崎さんに頼まれて」



思った通り休憩室にいた八木さんに、先ほどの話をざっくりと説明するとその目は心配そうに私を見た。



「大丈夫?醤油3本って、結構重いと思うけど。一緒に行こうか?」

「いえ、大丈夫です。力も結構ある方なんで」



心配してくれているのだろうけど……寧ろ八木さんのほうが細いものだから、物なんて持ったら折れてしまいそうな気がする。

そんな気持ちから八木さんの申し出を断ると、私は旅館をあとにした。



街のほう自体まだあんまり歩いたことがないから少し不安だけど……往復で30分あれば帰ってこれるかな。よし。

それにしても街まで出るのにいちいちバスなのが少し面倒。山の中を歩くよりは断然早いんだろうけど、原付か自転車かなにか足があった方がいいかもしれない。



そんなことを考えながら、まずは矢沢商店を目指した。




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