恋宿~イケメン支配人に恋して~
「話は以上。部屋への戻り道はそこらへんにいる従業員に聞け」
「……はーい」
って自分で案内すらもしてくれないんだ。性格悪い、腹黒い。やっぱり顔のいい男は信用しちゃいけないとしみじみ思う。
……ま、一ヶ月適当に仕事するだけで300万チャラになるなら、いっか。
「ちなみに明日は朝5時半にはフロントにいるように」
「は!?5時半!?」
って、なにその時間!
いきなりそんな出勤時間を言われるとは思わず、思い切り嫌な顔をしてしまう。
「制服支給に着付け、仕事の説明をするために通常より30分早いだけだ。文句あるのか?あぁ?」
ところがそんな私を怯ませるほどに、その顔は眉間に深くシワを寄せ、まるで鬼のよう。
「……ない、です」
そんな彼にそれ以上反論出来るわけもなく、私は引きつった顔で頷いた。
な、なんでこうなるの……。
心を癒すため、リフレッシュするために来たはずが仲居として働くことになった旅。
一ヶ月やり切ることが出来るのか、そもそも仲居なんて出来るのか。全てがわからず、全てが不安。
私、どうなるんだろう。
そんな、旅行1日目だった。