恋宿~イケメン支配人に恋して~
「ったく……うるさい女」
「あの、今のって」
「妹。俺と顔そっくりでしょ」
妹……。
確かに言われてみれば、垂れ目なところが似ているかもしれない。まぁ、この兄と比べれば数十倍も可愛げがあるけれど。
「なになになに!!宗が彼女連れてきたって!?」
「しかも若い女の子!!和服美人!!」
すると今度は、ドタバタと中年の女性が声をあげながらこちらへ出てくる。
少し痩せた白髪交じりのその女性は、おそらく宗馬さんのお母さんなのだろう。私を見ると「きゃー!」と嬉しそうな声をあげた。
「あらあら、初めましてー!宗の母ですー!美人さんねぇ」
「妹の奈緒です!」
「あ、あの……」
「あーもう、だから違うって!自己紹介やめろ!」
宗馬さん本人のイメージとは真逆の、よく喋り明るく元気なお母さんと妹さん。
そんなふたりに押され気味の私に、宗馬さんは間に入ると呆れたように声を荒げる。
「これは千冬の彼女!俺はこんな貧相な体した無愛想な女興味ないから!」
「なっ!」
ってそこまで言う!?やっぱり失礼な人!
けれどそこまで言われてようやく、二人は納得する。
「あら、そうだったの!千冬くんの!あんないい男捕まえてすごいわねー!」
「なーんだ、ようやく宗兄が彼女連れてきたと思ったのに。あ、千冬くんやめて宗兄にしたら?性格も口も悪いけどお金もないし小さな花屋の跡継ぎだけど……あれ、千冬くんよりいいところひとつもないや」
「うるさいよ」
妹さんのフォローにならないフォローに、思わず笑ってしまう。それが少し恥ずかしかったのか、宗馬さんはふたりの背中を押し奥の部屋へと戻らせる。