恋宿~イケメン支配人に恋して~

3.今日の空の色






どうして、こうなってしまったんだろう。



そもそもは、あんなところであんなシーンを見なければ。

あんな場所を通りがからなければ。自販機なんて探さなければ。お風呂になんて入らなければ。

旅行になんてこないで、慎が浮気なんてしなければ。



ひとつを後悔すると、あれもこれもと後悔してしまう。



あぁ、逃げ出したい。どうなるんだろう私。大丈夫なのかな、大丈夫じゃないよね……。





「……はぁ」



寝不足で、あまり頭の回らない6月2日の午前5時半。


前日にあの猫かぶり支配人……芦屋さんに言われた通り、私は洗顔や化粧など最低限の身なりだけを整えて私服姿でフロントへ向かい廊下を歩いていた。

やる気なく歩く足元からは、ペタペタとスリッパの音がだらしなく響く。



あー、眠い。なんでこんな時間から働かなきゃならないんだか……。

いや、そもそもは300万の花瓶を壊した私のせいなんだけどさ……あーもう!ありえないー!



まとめることもしておらず、手ぐしで直しただけの茶色い髪を、ぐしゃぐしゃとかいた。



するとついたフロントには、腕を組み立つグレーのスーツを着た背の高い後ろ姿。

その偉そうな立ち姿だけで、昨日の鬼のような顔がぱっと思い出される。


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