恋宿~イケメン支配人に恋して~
「ということは、まずは埃まみれのあの家中の掃除から始めてくれるってことだな?」
「……それもふたりで始めましょう」
う、そこまでは考えていなかった。
けど小さく頷いた私に、千冬さんは嬉しそうに笑うとまたひとつキスをした。
「そうだな。一歩ずつ、始めよう」
ふたりでなら、きっと大丈夫。そう聞こえた気がして、抱きつく腕により力を込めた。
すると、不意にその手は私が足元にかけていたジャケットのなかへと入り込むと、そっと私の太ももを撫でる。
「ぎゃっ!なに足触ってるんですか!」
「いや、こうして見ると確かにいい足してると思ってな。太ももだけ少し触らせろ」
「っ……ギャー!エロオヤジー!」
「オヤジ!?」
って、もう!折角のムードを壊すんだから!
体を力ずくで引き離す私に、その顔はおかしそうに肩を揺らして笑う。
「そんな照れなくても……どうせそのうちもっとすごい所触るのに」
「なっ!セクハラ発言!!」
「はいはい、悪かったな」
愛しさを感じて、ドキドキして、安心したり笑ったり。沢山の感情が降り積もっていく。
それがもっともっと増えて、いつか重く感じても、ふたりでなら大丈夫。
そう感じられる幸せが、ある。