恋宿~イケメン支配人に恋して~
「じゃあ見て!」
「は?」
「何日か仲居として働かせて、私の働きを見て!そしたら絶対、私のほうが女将として有望だってわかって貰えるから!ちぃちゃんの気持ちだって振り向かせてみせるから!」
へ?え??いや、それって……諦めないと、いうこと?
「いや、だから無理……」
「タダ働きでいいから!お願い!お願いします!それでもダメなら諦めるからー!!」
まだ諦めない、というか諦めたくないのだろう。明日香さんは勢いよく土下座をして頼み込む。
次第に、最初はしっかりと断っていた千冬さんだけど、さすがにそんな姿を見て、無情にも追い出すことは出来ないようで……。
「っ〜……何日かだけだからな!そしたら諦めろよ!?」
「うんっ!ちぃちゃんありがと!だいすきー!」
あーあ、折れた。
元々情には熱い人。元恋人とはいえ、そこまで頼み込まれたら断れないだろうことはなんとなくわかっていた。
ちら、とこちらをみた顔は『ごめん』と気まずそうに謝る表情。
……まぁ、別に明日香さんが何日か働いても、千冬さんの心が動くとは思わない。
信じてるもん、ね。
だから大丈夫。そう、ほんの少しの不安を感じるこの心に言い聞かせて。