恋宿~イケメン支配人に恋して~
「『今』の彼女は私……か」
堂々と『元カノが何言ってるんだか』って、それくらいの気持ちでいられたらいい。
そう、思うんだけど……。
あぁもう、あんまり考えすぎない!ご飯食べて少し休もう!
そう包みを開け、小さなチョコを口にばくっと押し込むと「よしっ」と気合を入れ直す。
「あっ、理子ちゃーん!」
すると、バタバタと元気のいい音とともにこちらへ駆け寄ってきたのは、噂をすればなんとやら……着物姿の明日香さん。
ぎこちなく笑顔を作る私にも、彼女は相変わらずの笑顔だ。
「お、おはようございます」
「おはよー!あれ、こっちに宗馬くんいなかった?」
「あ……えと、ついさっき向こうに行きましたけど」
「なーんだ。今日来てるって言ってたから久しぶりに顔見に来たのに」
いや、会わないほうがいいと思いますけど……。
宗馬さんが自分に対して怒っていることを知らないのか、知っていて尚気にしないのか。明日香さんはぶう、と唇をとがらせたかと思えば思い出したように私の顔を見る。
「あっ、そういえば理子ちゃん今日仕事午後からだよね?」
「え?あ、はい」
「じゃ、ちょっとお茶しない?私、休憩時間なんだ」
ふふ、と笑った彼女に当然乗り気ではないものの、上手く断る言い訳も見つけられず私は小さく頷いた。