恋宿~イケメン支配人に恋して~





「……理子、いるか?」



明日香の元を去った俺は、理子に話をするべく3階へと下り、彼女がいるであろう部屋のドアをトントンとノックする。

けれど、室内から声や物音の反応はなく、恐らく部屋にはいないのだろうと知る。



「あれ……あいつ、どこ行った?」



すっかり拗ねて部屋にこもっているとばかり思っていたが……館内のどこかにいるのか?

とりあえず別館を一通り見てみようと、3階から2階、2階から1階へと下りながら館内を見回る。



……いない。

もしかしてあいつ、こんな時間に旅館の外に出た?だとしたら心配すぎる……!!

一度裏口に行って、理子の靴があるか見てこよう。



そう別館の一番端にある裏口へと急ぎ足で向かうと、やってきたそこにはこんな時間にも関わらず人影がある。



「ん……?」



見れば裏口前の石段に座るフワフワと跳ねた茶色い髪の、俺と同じくらいの身長をした男。そう、それは宗馬の後ろ姿。

なんで宗馬がここに……?まぁいい。理子を見かけなかったか聞いてみるか。



「宗……」



『宗馬』、近付きながら呼びかけたその名前を思わず止めた。

なぜならそこでは、宗馬が理子を抱き締めていたから。



なんで、理子と、宗馬が……?



『間違いない、あの子絶対理子ちゃんに気があるわよ』



瞬間、頭に思い浮かぶのは先程の仲居の言葉。



『あっちもこっちも大切にしようとすれば、本当に大切なものから失くしちゃうんですから』



それと、八木の言葉。

ない、そんなことない。心の中で強く否定をして、声を絞り出す。





「……なに、してるんだよ」









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