恋宿~イケメン支配人に恋して~
23.つないだバトン【side宗馬】
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よく晴れた、ある日の朝。
「……」
「……」
休日だからとゴロゴロしていたアパートの一室。テレビの前で寝転がる目の前には、スーツ姿で仁王立ちする千冬がいた。
その顔はまるで、般若のよう。
「なになに、千冬。どーしたの、そんな怖い顔して」
「どーしたのじゃねぇよ……お前、この前はよくもやってくれたな!!」
「この前?」
「理子との一件だよ!思い切り恥ずかしい思いさせやがって……このバカ野郎!!」
予想していた通り、浴びせられるのは怒鳴り声。ガーガーと声を荒げる千冬に、俺は聞き流すように俺はテレビへと視線を戻す。
「けど仲直りできたんでしょ?俺のおかげじゃん。あ、あの後結局二人でこっち泊まったの?」
「泊まってねーよ!俺はすぐ仕事に戻ったし理子は泣き疲れて即寝てたし……」
「じゃあまだお預けなんだ?いい歳して初々しい仲ですことー」
「うるせーよ!!」
勢いよくツッコミを入れながら千冬は話を聞けと言わんばかりに、テレビをブツン!と消してしまう。
あーこれ、子供の頃よく母親にもやられたわ。懐かしいなー。
こんなにも千冬が怒る理由。それは先日俺がついた嘘にあるのだろう。
我ながら名演技だったと思う。おかげですっかり騙された千冬は、彼女の前で恥ずかしいことを言ってしまったということに怒っているのだろう。
俺からすればいい丸まり方したと思うけど。
フーッと、まるで威嚇する猫のような千冬に、俺はテレビを見ることを諦め立ち上がると、台所にある冷蔵庫から飲み物を取り出す。
「あの後、あいつと会ったよ」
「あいつって……明日香か?」
「そ。ついでだから、街まで送った」
一応、あのあと明日香と行き会って送り届けたことくらいまでなら話しておいてもいいだろう。
結局あの後、久しぶりに会ったあいつを大歓迎した奈緒と母親に囲まれ、朝まで家族全員で人生ゲームをするはめになり、いい歳して徹夜なんてしたものだから、次の日の仕事は仕事にならなかったけれど……。
「アイドルから実業家になって、あいつ最終的に石油王と結婚して大成功してたなー……」
「は!?」
いや、人生ゲームでの話だけど。