恋宿~イケメン支配人に恋して~
絢斗は、ふたつ年下の幼馴染。
小さな頃からずっと一緒で、ボーッとしていてマイペースな性格ということもあって弟のように面倒を見てきた。
あまりのマイペースさに、大学卒業後一度はサラリーマンとして就職したものの合わずに退職し、千冬さんの紹介で今は新藤屋の調理補助として働いている。
そんな絢斗に自然と心惹かれて、付き合い始めたのが私が21歳の時。
以来付き合って8年、同棲して5年。何年過ごしても絢斗は相変わらず、だらしないし世話が焼ける。
私も私で仕事場では多少抑えて静かにしているけれど、本当はあれこれと口うるさいタイプだからどうも言いたくなるし……。
「ご飯は?お昼何か食べた?」
「……ない」
「もう……じゃあお腹すいたでしょ。すぐに食べられるもの作ってあげる。何がいい?」
って、また!こういう時は『自分で作りなさい』って自分でやらせなきゃって思うのに……!
「オムライス」
「え?」
「……結菜の、オムライス」
だけど、こうして甘えられると弱い自分もいたりして。
……可愛い、なぁ。悔しいけどそう思うと、また自ら動いてしまう。
まるで恋人というより姉と弟。いや、それより母と息子。
理子ちゃんはよく千冬さんのことを『子供扱いされる』って言うけれど、それはきっと可愛がられている証。
千冬さんが理子ちゃんを大好きで、放っておけないのもよくわかるし。
なのにそれと比べて私と絢斗といえば……この状態。
一緒にいればいるほど、『結婚』の言葉が遠い。そういう意味を含めても、理子ちゃんたちがうらやましい。