恋宿~イケメン支配人に恋して~
「そのままカスみたいな働きを続けてみろ、3ヶ月に延ばすからな」
「は!?なんで!」
「当然だろうが。300万のために1ヶ月タダ働き、つまり日給10万の計算だぞ?死ぬ気で働けバカ女」
「なっ……!」
確かにそうだけどさ……いちいち正論でむかつくな。
「理子ちゃん、ちょっと」
「ほら、キビキビ働け」
「……はーい」
広間のほうから八木さんに呼ばれ、不機嫌な顔のまま広間へ戻った。
しみじみ働けと言われたって、元々ニコニコしてるほうじゃないし、明るくハキハキ喋られるほうじゃない。
子供も苦手だからすぐムカつくし、魚のことなんて知らない。
苦手なこと、分からないことだらけの中で、なにをどう頑張ればいいかも分からない。
「朝食後は食器を全部ケースに詰め込んで、厨房に戻すの。重いから気をつけてね」
そしてまた力仕事だし……。
9時半を迎えお客さんのいなくなった広間で、ガチャガチャと音をたてながら種類ごとに食器をケースにまとめていく。
持ち上げればずしっとしたその重みによろけそうになる私の一方で、おばさんたちはサッサッと慣れた様子でケースを運んだ。
すごい……ああいうのも、やっぱり慣れ?
あれだけ動ける人をみていると、やはり自分には合わない仕事のような気がする。けど真面目にやらなきゃ3ヶ月……それもいやだ。
その一心で、重い食器を運び、厨房におろし、また休む間もなく次の作業へと向かう。