恋宿~イケメン支配人に恋して~



1ヶ月だけでも長いのに1日追加って!なにそれ!

絶対奴の気分で決めてる……いいけどさ。1ヶ月終わったらにげてやる。



その後、今日のチェックイン準備までの間少し休憩を貰った私は、ひとり館内の廊下を歩いていた。

あ、そういえば今朝脱いだ服、休憩室に置きっ放しだ。今のうちに部屋に持って行っておこうかな。



そう今朝着替えをした休憩室へと向かい、ドアを開けようとしたその時。



「あの子も運が悪いわよねぇ」



僅かに開いたドアから聞こえたのは、仲居さんたちの話し声。

この声……おばさんたちだ。八木さんはまだやることがあるからって仕事をしているけれど、おばさんたちは私と同じく休憩なのだろう。

わいわいと話している声は、ドアの向こうの私の存在には一向に気付かない。



「あの花瓶壊した代償としてタダ働きでしょ?旅行に来たのにね~」

「でも変わってる子だよねぇ。ま、女ひとりで1ヶ月連泊って時点で変わってるとは思ってたけど」



……って、私の話か。



名前を出されなくとも『花瓶を壊した』『旅行に来た』『1ヶ月連泊』、そのワードだけで私のことだなんてすぐに分かる。

女の集団が誰かのことをこういう口調で言うときは……。



「可愛げないわよねぇ、愛想もないしふてぶてしいし」

「まだ戸惑ったり、愛想よくしてればこっちも可愛がってあげるのに」



ほら来た。悪口だ。

予想通りの話の内容に、それ以上ドアを開けるのを一度やめる。



悪かったな、ふてぶてしくて。愛想がないのは元々だっての。


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