恋宿~イケメン支配人に恋して~



「きっとこういう仕事向いてないのよねぇ、正直ああいう子がいると迷惑っていうか」

「そうよねぇ、役にも立たないし足は引っ張るし……使えない子なんていらないのに」

「……」



『いらない』、……って。そんなの、分かっている。

はぁ、と息を一つ吐くと開けかけていたドアをそのまま開けた。



「わっ!?吉村さん!?」

「あらやだ!今の話……」

「聞こえてました、すみません。あ、荷物取りに来ただけなのでお構いなく」



驚き一気に『まずい』といった空気になる室内をスタスタと歩き、部屋の端に置かれた服を淡々と拾う。



「あ、あのね?今のは決して悪気はなくて……」

「大丈夫ですよ、事実ですし」



こういう反応がまた、可愛くないと言われるのだろう。

けれど女々しく泣くことも出来ない私は、しれっとした顔でそのまま部屋を出た。



可愛げがない、向いていない、いらない。

わかってるよ、そんなこと。私だって好きでやっているわけじゃない、仕方なくやっているだけ。

なのに、なんでそんなことを言われなくちゃならないの。


< 42 / 340 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop