恋宿~イケメン支配人に恋して~
3歳年上で、私の家近くのスーパーで社員として働く慎。茶色い髪に細い体と穏やかな性格が、ちょっと女の子のようで頼りなくて可愛らしい。
けれどすごく優しくて、こんな可愛くない私のことも愛してくれる。
まだ付き合って一年だけど、いつか結婚出来たらいいな……なんて、なに考えているんだか。
顔や態度には現せられないけれど、ついこぼれる心の本音にひとりで恥ずかしくなってしまう。
そして着いた最寄り駅で降りると、そのまま慎の住むアパートへと向かった。
コツ、コツと歩くたび鳴る黒いパンプスのヒール。白いスキニーパンツが、5月末の真っ赤な夕日の色に染まる。
いたって普通の、いつも通りの光景。
もう夕暮れ。今日も悲しいくらい何もない一日だった。これからもこうやって生きていくのかな。いくんだろうな。
『あなたの代わりなんていくらでもいるんだから』
思い出す一言に、今日何度目かもわからない溜息をついて、やって来たアパートの前で足を止めた。
2階建ての白い小さなアパート。慎の部屋である1階の角部屋を見ると、水色のカーテンは閉められたまま。あかりもついていない。
やっぱり寝てるな……もう。いきなり枕元に立ってびっくりさせてやる。
芽生えたいたずら心から、音をたてないように部屋へと向かい、そーっとドアを開けた。