恋宿~イケメン支配人に恋して~
「おばちゃんたちで泣きやまないとなると相当ですねぇ……芦屋さんも子供には泣かれやすいですし」
「あぁ、いくら愛想がよくても子供には分かっちゃうんですね」
「おい吉村、どういう意味だ」
八木さんと私、そして芦屋さんが話す一方でひたすらに泣く女の子に、みんなしてどうしたものかと頭を抱え出す。
「もう無理!泣きやまない!八木ちゃん、吉村さん、若い子たちでどうにかできない?」
「えぇ~……そう言われても」
お手上げだからとこちらへ投げてきたおばちゃんに、八木さんは困った顔を見せる。
「えーと……じゃあ、いないいない、ばー!」
「いやぁぁー!うぇぇ~っ……ままぁー!」
「やっぱりダメだねぇ……」
子供の扱いには慣れたおばさんたちがあやしても泣く、優しげな八木さんがあやしても泣く、芦屋さん……でももちろん泣くだろう。
けどさみしさや不安から苦しそうに泣く子供を、そのままにしておくことも出来ない。
じゃあ、私だったらどうしてあげられるだろう。この子に、何をしてあげられるだろうか。
「……おんぶ」
「へ?」
「おんぶしてあげる。乗って」
ふと思いついたまま、唐突に私がとった行動に、その場の人間は皆きょとんと首を傾げる。
それは女の子も同様で、目の前にしゃがみおんぶの形をとる私に、不思議そうに涙で濡れた目を丸くした。