恋宿~イケメン支配人に恋して~
「仲居さん、お魚覚えるの苦手なのねぇ」
「すみません、皆同じに見えるもので」
「あらやだ!あははは!」
更に正直に言ったのが一層おかしかったようで、お客さんは大きな声で笑った。
そう簡単に、皆のように上手くはいかない。
けれど、自分に出来ることからひとつずつやることで、こういうコミュニケーションの取り方もあるのだと知る。
「理子ちゃん、お客様と上手く話せてたじゃない~」
「相変わらず愛想はないけど案外愛されキャラねぇ」
お客さんの対応を終え廊下に出ると、おばさんたちがにこやかに私の肩を叩く。
「……ありがとう、ございます」
褒められ慣れていない私は、こういうときの表情にまた迷ってしまうけれど、少し照れながら呟くと皆はまた笑ってくれた。
ほんの少し感じる、居心地のよさ。