恋宿~イケメン支配人に恋して~
そーっと、そーっと……。
ゆっくりドアを開け、靴を脱ごうと玄関へ目を向けた。すると、そこには慎がよく履いている、星のマークの黒いスニーカー……それと、淡いピンク色のヒールの低いパンプスがある。
見た感じ、靴のサイズはSサイズ。Lサイズの私にはつま先くらいしか入らないし、そもそもこんな可愛らしい色の靴なんて持っていない。つまり、私の物ではない。
「……は……?」
思わず小さな声をこぼし、奥の寝室へ続く廊下を見れば、点々と落ちている白いカーディガン、ストッキング、ベージュのワンピース、白いブラ……それとお揃いのパンツ。
嫌な予感しかしないんですけど。
いや、でも何かの間違いかもしれない。そう、きっと何か違う何かが……。
頭に思い浮かぶ、そのパンツの先にある寝室で繰り広げられているであろう光景をかき消し、そっと靴を脱ぎ一歩一歩廊下を歩く。
そして、部屋のドアノブに手をかけた、その時。
「あぁんっ、慎くんっ……だめぇ、」
「ん……恵里奈、可愛いよ。もっと声聞かせて」
「でも、慎くん、彼女いるのにぃっ……」
「彼女の話は今はなし。ここには俺と恵里奈だけなんだから」
聞こえてくるのは、甘い喘ぎ声と紛れもない慎の声。
いやいやいや、あんたたちだけじゃないですよ?私もいますよー?声丸聞こえですよー?
……っていうか、これはもう確実だよね。
思わずもれた失笑に、私はドアを思い切りバン!と開けた。