恋宿~イケメン支配人に恋して~
旅館の一日というのは朝の朝食準備から始まり、その片付け、チェックアウトのお見送り……と午前中の仕事を終える。
それから清掃係の人が掃除をしてくれている間にお昼休憩をとり、その後にチェックイン準備からお出迎え、宴会や夕飯の準備へと取り掛かる。
もちろんその間には様々な雑用もあり、なんだかんだと慌ただしい。
……今日は八木さんは朝5時半から15時までのシフトだから、夜は他の人と作業だ。
迎えたお昼休憩の時間、外の空気を吸いたくなった私は、昨日同様別館の裏口にある石段に座り手元のシフト表を眺めていた。
沢山いる仲居、全員の勤務時間が書いてあるシフト表。
大体は皆、朝から夕方か昼から夜までの勤務時間。もちろん主婦は昼間だけという人もいるし、朝だけという人もいる。
ちなみに深夜は、受付担当の男性たちしか残らないのだそう。
そんななか私のシフトはというと……紙の一番下に整った文字で『吉村→全日5時半~22時まで』と書かれている。
……そう、シフトなど関係なく、休みなく朝から晩までという、ブラック企業も真っ青な勤務時間だ。
まぁ、日給10万円相当だし……寝坊もしているし、皆ほど動けてもいないしね……当然っちゃ当然なんですけど。
「……はぁ、」
空を見上げ、ついこぼれた溜息。けれどそれは、昨日よりは軽く、ほどよい疲れに感じられた。