恋宿~イケメン支配人に恋して~
「……あれ、」
何気なしに目を向けた目の前の景色。
そこは従業員用の駐車場となっており、車が並んでいるとともにいくつかのごみが散らばっている。
ごみ……そういえば今朝、風強かったっけ。
恐らくどこからか飛んできてしまったのだろう。沢山の落ち葉やお菓子や雑誌のごみに、それを近くにあったほうきで掃き集める。
ここ、本館の廊下の窓から見ようと思えば見えちゃうもんね。『表は綺麗でも裏は汚い』なんて思われるのも、嫌だ。
そんな気持ちから、サッサと一ヶ所にごみを掃き集めた。
「自分から掃除をするとは、感心だな」
「へ?」
突然の声に振り向くと、そこには昨日同様立っていた芦屋さんの姿。
今日も煙草を吸いに来たらしい彼は、珍しくスーツのジャケットを来ておらず、白いワイシャツに明るい緑色のネクタイ姿で煙草を取り出し火をつける。
「……芦屋さん。なんですか、休憩時間まで見張りに来たんですか」
「なわけあるか。煙草吸いに来たんだよ」
漂うのは、昨日と同じ匂い。
ほうきで辺りを掃く私を見ながら、彼はつい先ほどまで私が座っていた場所へと腰掛ける。