恋宿~イケメン支配人に恋して~
柔らかな笑顔で、いつも愛を伝えてくれた慎。なのに私はいつも素直に気持ちなんて伝えられず、可愛くないことばかり言っていた。
『ん……恵理奈、可愛い』
だから彼は、あの子と関係を持ったのだろう。可愛らしい、あの子と。
いくら私が心の中で慎のことを想っていたって、言わなければ意味がなかった。慎に伝わらなければ意味がなかった。
伝えないから、終わってしまった。
もう過去の恋となった、彼とのこと。
「ん……、」
ピピピピ、と鳴る目覚まし時計にふと目を覚ます。
眩しい朝陽に目をこすると、目元はしっかりと濡れていて自分が泣いていたことに気付いた。
……泣いて、いた。
久しぶりに少し悲しい気持ちとなった、旅行7日目の朝。