恋宿~イケメン支配人に恋して~
今日は朝食時間が遅い人ばかりだからと6時すぎの集合を言い渡されていた私は、支度を終え朝の館内を歩いていた。
ちら、と見た窓に映るのはすっかり着物姿の馴染んだ自分。
着物の着付け方もまだ紙を見ながらだけど慣れたし、朝早く起きるのも段々苦ではなくなってきた。
そんな自分の姿はすっかりここに染まってきていて、たかが一週間、されど一週間の重みを思い知る。
「……もう一週間、か」
着物の懐から取り出したのは、日頃使っている自分のスマートフォン。……といっても、あの日東京を出た時に電源を落として以来そのままで、ここ一週間画面は真っ暗なまま。
電源を入れ直すべきか、否か……悩んだ末にまたしまう。ひたすらその繰り返しだ。
「理子」
呼ばれた名前に振り向くと、後ろから歩いてきたのは芦屋さん……改め、千冬さん。
珍しく灰色のスーツを着ている彼は、こちらへスタスタと歩いてきて私の隣へと並ぶ。
「……千冬さん。おはようございます」
「おう。ここ何日か寝坊してないな、偉い偉い」
「私だって慣れればちゃんと起きられます」
「どうだかなぁ」
からかうように笑われムッと不機嫌な顔をすると、彼はますますおかしそうに笑う。
なんかムカつく……。
ふんっと顔を背けた私に、千冬さんはふとなにかに気付いたように顔を覗き込んだ。