恋宿~イケメン支配人に恋して~
「きゃっ!?」
「うわっ!り、理子!?」
瞬間、そのままの形でふたりはこちらを見る。
薄暗い部屋の中の大きなベッドの上には、黒く長い髪をした小柄な女の子と、茶色い髪を汗で濡らした慎。そのふたりが真っ裸で、つながったものを隠すこともせずに。
……うわ、本当に予想通りの光景だった……。
先程までのデレデレとした気持ちがまるで嘘のように、サーッと引いていく。代わりに込み上げてくるのは、彼に対する嫌悪感。
「ど、どうしたの!?早かったね……」
「早くないよ、もう18時だし。帰る前にメールもしたんだけど……あ、夢中で気付かなかった?それはそれはお疲れ様です……」
自分たちの状況を思い出し、急いで体を離す慎と女の子に、ははっと乾いた笑いをこぼしながら、私はズカズカと部屋へ入る。
そして寝室に置きっ放しにしていた自分の服や化粧品を拾い集めた。
「あ……の、えと……その、」
彼女持ちの男に手を出しておきながらも、こんな状況になるなど夢にも思わなかったのだろう。まずい、とすっかり血の気の引いた顔で、同じ歳くらいの女の子はシーツにくるまり私を見る。
言い訳を探しているその顔は、薄い化粧にも関わらず色白で大きな目をしていて、小顔。唇も小さくて、ちらっと見ただけでも可愛い。
同時に、先程見た淡いピンク色のパンプスがすごく似合いそうな子だと思った。
「理子、あのさ、これには訳があって……」
「へぇ、訳?」
「そ、そうなんだ。これは偶然、流れというかなりゆきというか……」
「流れ、ねぇ」
ベッドからおり必死に言い訳をする慎を無視して、荷物を適当にまとめていく。