恋宿~イケメン支配人に恋して~
「では、今日のチェックイン準備を始めます」
「はい」
迎えた午後。いつものように私と八木さんは、客室で宿泊表を見ながらチェックインの準備を始める。
「今日は、305号室に大人二名に子供三名……」
「あ、そのうち子供二名は赤ちゃんらしいから浴衣とかはいらないよ」
「赤ちゃん?二人もですか?」
子供用の浴衣を一枚手にとり首を傾げると、八木さんは湯呑を整えながら頷いた。
「双子なんだって。いいよねぇ、可愛いだろうなぁー」
「八木さん、子供好きなんですね」
「うん。ここの人は皆好きなんじゃないかな、うちの旅館子供連れ多いし」
言われてみれば、確かに家族連れが多いかも。宿泊料金が安いから、家族で泊まりやすいのかな。
「浴衣の代わりにタオル二枚くらい多く入れておいてあげてね」
「タオルですか?」
「小さい子は何かとタオル必須だからね。お客様も自分で持ってくるだろうけど、ここのタオル使えば荷物にもならずに置いていけるし」
「へぇ……」
子供やその状況を考えて、準備をしているんだ。これも千冬さんの言っていた『おもてなし』なのかな。
納得しながら、タオルや浴衣をクローゼットにしまい、浴室の確認へと向かう。
確かに、お客さんが泊まって『気が利いていていい旅館だった』って感じて貰えたら、嬉しいよね。
そう、だよね。ひとり納得し、より念入りにチェックを続けた。