恋宿~イケメン支配人に恋して~
「わかいしはいにんだからどんなものかとおもってたけど、なかなかがんばってるじゃん」
「お褒めいただき光栄です」
「かおもわるくないし、いいんじゃない?そこのぞうきんおんなはブスだけど」
「なっ!?」
雑巾女!?ブス!?
子供が偉そうに……しかも千冬さんにも『頑張ってるじゃん』なんて、私ですら言ったことないのに!私だって一回くらい言ってやりたいのに!
頭のなかを駆け巡る不満が顔に現れていたのだろう、千冬さんは私の手の甲を人から見えないようにつねる。
「いっ!なにするんですか……」
「お客様の前だ。変な顔をするな」
聞こえないように小声で会話をしながら、ちらっと目の前の男の子を見る。
取り出した携帯ゲーム機をなにやらいじっている男の子はこちらの会話には興味がないようで、その様子に私と千冬さんはまた小声で会話を続けた。
「なんなんですか、この子……どこの子ですか」
「あの双子連れの家族の子供。子供3名、って書いてあっただろ」
そういえば、大人2名に子供3名……うち2名が赤ちゃんってことは、子供がもうひとりいるはず。
ってことはこの生意気な子がそこの子ってこと。
「にしても大人びているというか……生意気」
「こういう子供も少なくないんだよ。くれぐれも、ムキになって言い返したり怒るなよ。子供とはいえお客様だからな」
「……はーい」
ちょうど会話を終えたあたりで、男の子はパタンとゲーム機を閉じ半ズボンの大きなポケットにしまう。