恋宿~イケメン支配人に恋して~
「……つまんない」
「へ?」
「このりょかん、なんもなくてつまんない。だからぞうきんおんな、おまえおれのあそびあいてになれ」
「は!?」
なにを言い出すかと思えば……遊び相手?そんなの無理に決まってる。
普通の子供でも無理なのにましてやこんな生意気な子供……ていうか、雑巾女って呼ぶな。
「そんなの無……」
「そうですね、うちの吉村でよければいくらでもお相手致します」
「って、え!?」
ところが隣の千冬さんは、いい笑顔とら二つ返事で了承してしまう。
「ま、待ってくださいよ。私子供の相手なんて無理……」
「大丈夫だ、お前なら出来る」
「でも仲居の仕事だってありますし……」
「お前一人分なら俺がなんとかしてやる。これも仲居の仕事のうちだ。頼んだぞ」
『頼んだぞ』の言葉とともに、ポンッと叩かれる肩。
それが意味するのは『生意気な子供にあれこれ動き回られるよりお前一人が相手してくれたほうが安心だ』という、支配人としての本音。
「よし、きまり。いくぞぞうきんおんな!」
「えっ、ちょっと、っ~……千冬さんのバカ!」
「はいはい、頑張れー」
そうと決まれば行動は早く、男の子は私の腕を引っ張り走り出す。
はぁ……仕方ない、か。夕飯の時間まで適当に時間潰しに付き合ってあげよう。
男の子に引っ張られながら、諦めたように溜息をひとつこぼした。