恋宿~イケメン支配人に恋して~
「ねぇ、のどかわいた。ジュースかってよ」
やってきたのは、2階にあるロビー。テラスから景色を眺めることの出来るその場所で、男の子は自販機を指差した。
「えっ……仕方ないな。どれ飲む?」
「こーら。かろりーぜろのやつ」
「健康的だね……」
まぁジュース1本くらいならいいけど……。
着物の懐から小銭入れを取り出し、飲み物をコーラとお茶の2本買う。そして1本を男の子に手渡すと、彼はそれを持ち近くの大きなソファにぼすんっと座った。
「名前は?なんていうの」
「だいき。もとみやだいき。おおきなき、ってかく」
「大樹くん、ね」
同じくソファへ座ると、その子……大樹くんは缶を開け、コーラを一口飲んだ。
「あ、私は吉村理子だから。雑巾女って、やめてよね」
「リコ?だっさいなまえ」
「ダサいって言う方がダサい」
「こどもかよ」
子供に子供って言われた……。
イラッとしながら、私も缶を開け冷たいお茶を一口飲み気持ちを抑える。
「大樹くん、いくつ?」
「ごさい。リコは……いいや、おばさんのとしきいてもつまんないし」
「おばさん!?」
せめてまだお姉さんでしょ!!あぁもう、本当に生意気……!
反論したい気持ちをまだぐっとこらえる私の隣で、大樹くんはコーラを飲むと炭酸にぷはっと息を吐いた。
「なーんか、ほんとじみなりょかん。だからおれはおんせんなんてやだっていったのに」
「地味じゃなくて風情があるっていうの。あ、子供にはわからないか」
「そのいいかたむかつく」
子供相手に風情を語り鼻で笑う……なんて、大人気ないと自分でも思う。けど、ここまで言われっぱなしだし少しくらいいいよね。