恋宿~イケメン支配人に恋して~
「この……大バカ者!!!」
その後、千冬さんに連れられやって来たのは、浴室近くにあるリネン室。
狭い中にタオルや浴衣の並べられたその部屋で、借りたタオルを手にする私に彼は思い切り怒る。
「お客様から『仲居が男児と男風呂に駆け込んで言った』って言われたから何事かと駆けつければ……若い女が、しかも男風呂に入るとはどういうことだ!」
「だ、大樹くんを追いかけて……つい」
「確かに子供が風呂に飛び込まなかっただけマシではあるが、その代わりにお前が入ってどうする!せめて男のスタッフを呼べ!!」
目をつりあげて怒る千冬さんは、それはもう迫力満点でその勢いに「スミマセン」とだけ呟く以外なにも言えなくなってしまう。
そんな私に、彼は呆れたように深い溜息をついた。
「……はぁ。ったくこのバカ、全身びしょ濡れじゃねーか。ちょっと待ってろ、今誰かに着替え持って来させる」
そして携帯で電話をかけると、仲居の誰かに「休憩室の押入れから着替え持って来てくれ」とだけ用件を告げて電話を切った。
「別に着替えくらい自分で……」
「お前がうろついたらそこら中びしょ濡れだろうが。バカ」
「あ、確かに」
かと思えば棚からもう一枚タオルを取り出し、私の頭にバサッとかける。