恋宿~イケメン支配人に恋して~
「よくないです。全然」
「そう?千冬くんもよく気にかけてると思っていたんだけど……ほらあの子、意外と手のかかるタイプの女の子が好きっていうか」
いや、私と千冬さんの間柄はどう見ても……使用主と小間使い。ないないと否定して、ふと隣の八木さんの存在を思い出す。
そ、そういえば八木さんは千冬さんと付き合っているんだよね?
なのに仲がいいとか……聞いて気分のいい話ではないよね?
「本当ないんで。全然仲良くないですから。私とあの人は300万でしか繋がってませんから」
「へ?うん?」
念を押して言う私に、八木さんは意味がつかめないのかきょとんと頷く。
「でもその時も千冬くんとリネン室でふたりで居たんでしょ?濡れた女と男がふたりきり……いやらし~」
「なっ!!」
って、箕輪さんまた余計なことを!
千冬さんと八木さんのことを知らないのだから当然かもしれないけれど、おばさんたちは「やだ〜」とニヤニヤとひやかすように言う。
けれどこちらからすれば、当然笑えるわけもなく八木さんの顔色を伺ってしまうわけで……。
「わ、私やっぱり向こうで飲み物買って休憩とります」
「あら、そう?まぁ若い子だもの、お茶よりジュースがいいわよね~」
居づらさに立ち上がると、逃げるように休憩室を出た。