恋宿~イケメン支配人に恋して~
寝て、る?
ここで寝ているの!?せめて室内とか……まぁでも確かに、この天気の良さなら昼寝したくなるのも分かるけど。
疲れてるのかな。そういえば昨夜は夜勤で、今日そのまま日勤のシフトだったっけ。
睫毛を伏せた寝顔は、いつもの怖い顔とは違う。寧ろ、ちよっとかわいい気もする。
……寝ていても綺麗な顔してるなぁ。あ、日差しはあたたかいけど風が少し冷たいから、このままじゃ風邪ひいちゃうかも。
そう思い、持ってきたブランケットを彼の肩にそっとかけた。
「……」
寝ている彼を起こさないように、バッグの中からスマートフォンを取り出す。
まだ電源は切ったままの、青いカバーのスマートフォン。
……素直にならないと人生損する、か。思い出すのは先日の大樹くんの言葉。
いつまでも逃げたように連絡を絶っていてもダメだよね。勇気を出して、ボタンを押して電源を入れた。
ピロリロ、と電源の入った音から少しして電話はメールと着信履歴を一気に受信する。
画面には『受信メール50件・着信34件』の文字。
「うわ……すごい量」
そのほとんどは慎からのもので、残されていた留守番電話を聞くべく耳をあてる。
『……理子?この前はごめん。でも彼女とはただの気の迷いっていうか……あんなことの後で信じて貰えないかもしれないけど、俺には理子だけだよ。気持ちが落ち着いたら、連絡ください』
プツ、ツー、ツー……と録音を終えた留守電に、画面をホーム画面に戻した。
「……なにが、気の迷いよ」
久しぶりに聞く、慎の柔らかな声。
だけどその音は、ただこの心を余計にぐちゃぐちゃにかき乱すだけ。