ミントグリーン~糖度0の初恋~
「千波ちゃん、メイク変えた?」
改めて私の顔を見た踊子さんが首を傾げる。
「……変ですか?」
上目遣いで恐る恐る訊ねた私に慌てて手を振りながら踊子さんは言ってくれた。
「ううん。似合ってるよ。おかしいなんてことは全然ない。
ただ、随分大人びて見えたから驚いちゃったかな?」
「大学の友達にメイクが得意な子がいて教えてもらったの。
せっかく誕生日だから大人っぽくしてみたくなって」
「そういうことか。
うん、いつもとちょっと違ってカッコいい女性って感じ」
その言葉にホッと胸を撫で下ろす。
本当は誕生日だから、じゃない。
踊子さんが私の誕生日を定時退社するから一緒にお祝いしようと言ってくれた時、シンタくんの店でしてほしいと頼んだ。
「もちろんそのつもりだったよ」
踊子さんが快諾してくれたので、私はメイクを特訓した。
シンタくんに違う私を見てほしくて。
この姿が出会った頃の私を越えるとは思わないけど、あのシンタくんの言葉に対する解決の糸口すら見つけられていない私には
『思い付いたことは何でもやってみる』
ことしかできない。
最近の私は恋愛に関して完全にマイナス思考の連鎖に陥っている。